
最近、”心理操作”や”暗示”が怖いです。かけられたら、自分の意思がなくなってしまうんですよね??
まず、安心してほしいことがあります。
暗示には、人の心を乗っ取ったり、なんでも命令通りにさせるような魔法の力はありません。
言葉を聞いただけで、人格が簡単に変わったり、大切にしてきた価値観が一掃されるわけではないのです。
ただ、気をつけなくてはならないポイントがあります。
つまり、「言葉が暗示として心に刻まれてしまう」シチュエーションがあります。
たとえば、恐怖(の感情)、疲労(睡眠不足なども含む)、孤立、反復、権威(を相手に感じている)などの条件下では、
言葉に暗示的な”力”が生じやすくなります。
- つまり、危険なのは、ひとつの”魔法の言葉”ではなく、
- 複数の”心理的な働きかけ”を重ねてくる”合わせ技”です。
この記事は、日ごろなんとなく”心理操作”、とくに”暗示”に不安を持つ人向けです。
読み進めるにつれ、「暗示の正体」だけでなく「暗示なのか/そうでないか」の違い、
さらに、「暗示や心理操作を回避する具体的な方法」まで、理解できるようにわかりやすく解説しました。
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そもそも”暗示”とは何だろう?
暗示とは、言葉や態度、状況などによって、相手の考え方や感覚、行動に一定の方向性を与える働きかけのことを指します。
暗示そのものの属性は善でも悪でもありません。
たとえば。
- ①信頼している人に、
- 「今日は顔色が悪いね」と
- 何度も言われているうちに、本当に体調が悪くなった。
または、
- ②やはり信頼している人から、とても緊張しているときに、
- 「大丈夫。いつもどおりやればいい」
- と言われたら、急に落ち着きを取り戻した。
実際に、この後者の例を敷衍して、医療や心理支援の分野では、痛みや不安、習慣などへの対処を助ける目的で、催眠や暗示が使われることもあります。
そして、問題となるケースがあります。
それは、相手の利益ではなく、暗示を使う側の利益のために判断を偏らせる目的で暗示が行使されるケースです。

対面で注意したい「暗示的な話し方」
暗示的な誘導が、見るからに怪しげな言葉で行われるとは限りません。
むしろ、親切、共感、励ましの形を取ることもあります。
たとえば。
まだ同意していない(気持ちが定まっていない)相手に、
あなたも、本当はわかっていますよね?
と、すでに心の中で同意している、と決めつける話し方。
また、警戒心を抱きはじめた相手に、
不安になる、というのは、変わりはじめている証拠ですよ
これは、警戒心を”良い変化のきざし”と変換して処理して、「警戒して立ち止まったり考える」余地を奪おうとする話し方です。
ほかにも、
あなたは素直で賢い人だから、きっと理解できますよ
一見、誉め言葉のようですが、この言葉の裏には「私に反論すれば、素直でも賢くもないということだぞ」という圧力・脅しが隠されている場合があるのです。
ここで決断するか、これまで通り苦しみ続けるか。どちらかでしょうね。
こう言って、じつは無数にある選択肢を「2つだけしかない」と思わせます。
「今日は決められない」「別の人と相談させてください」「ほかのやり方を検討したい」という選択肢を消しています。

もちろん、こうした言葉だけを切り取って、相手が心理操作をしている、と決めつけることはできません。
とはいえ、どうもおかしい、何かがひっかかる、不安や緊張・圧迫感などを感じる……そんなときに、試してほしいことがあります。
それは、あえて疑問を示して見せ、そのときの相手の反応をよく見ることです。
こちらの疑問・質問に、きちんと答えるかどうか。
こちらが考える時間を認めるかどうか。
「嫌だ」「帰る」という拒絶の意思を尊重するかどうか。
――これらの当然の要求に対して、どのような反応を見せるか??
そこに相手の本質が表れます。

言葉よりも気を付けたいのが”シチュエーション”
はじめに”合わせ技”が危険、と記しました。
じつに、暗示に影響力を与えるのは、「言葉のみ」ではありません。
情報を冷静に比較することができない状況に相手を置く手口があります。
- 長時間拘束する(危険そうな場所に限らない。”セミナー会場”などの密室やカラオケボックスなども)
- 周囲の人間は皆、相手の仲間ばかり
- 静かな密室に2人きり
- 睡眠不足が続いている(眠れないようにされているケースも)
- 大きな不安や孤独を抱えている
このような状況下だと、冷静な思考や判断はしにくくなります。
睡眠不足が一定の条件下では、誤った記憶を生じさせやすくする、という研究報告もあるほどです。
また、最初に強い不安を与えたり、相手の抱えている不安を強く刺激し、そこで、
でも、私に任せてくれれば(私の言うとおりにすれば)助かります。
と救済策を出す。
すると人は、魅力を感じやすくなるのです。
暗示や心理操作をして、他者を思い通りにしようという輩は、相手(被害者)に冷静な思考をされては困るし、仲間と相談されても困るため、第三者との接触を回避させたがります。
そのようなときによく使われる言葉が次の2つ(典型例として)。
あなたを理解できるのは私だけだ
ご家族に話すと、きっと反対されるだろうから黙っていたほうがいいね
こうした言葉を上手いタイミングやシチュエーションで使う相手は要注意です。
じつのところ、暗示そのものは、さほど怖いものではありません。
危険なのは、判断力を鈍らされることや、ほかの意見が聞けない状態や状況に置かれることです。

最後の2つなんて、ナンパ師が使いそうですね。
暗示で人は”思い通り””言いなり”になるのか?
まず、よくある間違いのひとつに、
- 催眠状態に入ると意思が消滅する
というものがあります。催眠状態になっていても、本人は自分を制御できるし、望まない暗示を拒否することもできます。
また、暗示により、、注意の向け方や感情、身体感覚、記憶の受け止め方が変化することはありますが、強い強制力を持つものではありません。
ですが、「それならば、絶対にだまされない」と考えるのは、危険です。
まず、人によって、暗示を受けやすいかどうかには個人差があり、非常に暗示を受けやすい人も存在します。
そして、意図的に暗示をかけようとする相手は、そこを見抜くことに長けています。
また、そのような相手は「合わせ技」を巧妙に使います。つまり、標的にした人の体調や状況などを利用するのです。
相手は”一撃必殺”を狙ってこない
さらに、そういう相手は、「一度で大きな要求を通す」ことはしません。
心理操作で多用されるのは、「小さな同意を重ねて行く」方法です。
たとえば。
- 最初は無料で相談のみ
- 次は少額の商品を買わせる
- その次に仲間の集いに参加させる
……このようにして、徐々に要求をエスカレートさせていきます。
この流れに取り込まれてしまうと、次第に相手の言いなりになるばかりか、時には相手と連帯感を抱いたりするようになります。
そうなると、”引き返す”ことに、心理的な負担を感じるようになるため、かなりの被害を受ける事態を招きます。
こういった手段は、犯罪者だけではなく、ある種の政治的思想を持つ団体、カルト宗教その他でも頻繁に使われています。違法でなくても、ある種のビジネスでも使われています。
暗示だけで人を支配することは難しいでしょうが、人間関係や環境に働きかけることで、判断や思考を少しずつ偏らせていく――それは、十分にあり得る手口なのです。

”違和感”を大切にする|時間と距離感を取り戻す
とはいえ、別に難しい心理技術を身につける必要はありません。
素直な感覚で、心理操作や暗示的誘導から身を守ることができます。
大切なのは、肌身で感じる”違和感”です。

何か変だ……
そう感じたら、まず「今日は決められません」と言うことです。
次に、できるだけ早く、その場を離れる。
――まずは、これだけで、大きな効果があります。
また、次のような事柄は「疲れているときや動揺しているときは、しない」と決めましょう。
- 契約
- 購入
- 入会
- 支払い

Luna
相手がしつこくても振り切ることニャ!
また、「おかしい」と感じたら、相手の説明をメモすることも効果的です。
改めてその内容を見返す。また、内容を次の3つにわけてみましょう。
- 事実かどうか・それを確認できるものなのか
- 未来の予測に過ぎないものか
- 相手の感想に過ぎないものか
さらにこの内容を、利害関係のない第三者に説明します。
そうやって自分の言葉で話しているうちに、なんらかの操作(選択肢を狭められていたり、決断を急がされていたり、etc.)に気づくことも多いです。
もし相手が信頼できる人物なら、
「家で考えさせてください」「家族と相談します」と言っても困らないはずです。
そこで動揺したり、妨げる言動を取るとしたら、警戒しなくてはならない人物です。少なくとも、信頼できる相手ではありません。

人を疑ってかかるのではなく、自分の違和感を大切にする
私たちは誰でも、他人の言葉や場の空気に影響されながら生きています。それは弱さではなく、人間が社会の中で生きるために備えている性質です。
だから、すべての人を疑う必要はありません。
大切なのは、心に芽生える違和感です。
- 「どういうわけか、断りにくい」
- 「今すぐ決めなくてはならない気がする」
- 「この人以外には相談してはいけない(感じがする)」…………
ほかにも、「何か変」と感じたり、イヤな感じがあるときは、いったん止まって良いのです。
相手に付き合わされる義務などありません。この場合、拒絶したり疑問を呈することは失礼にはなりません。
- 冷静な比較・判断・思考ができるようになること
- 状況を読み取れるようになること
- 自分を取り戻すこと
- 相手との距離感を把握できること
普段、無意識に行っていることを、思い出すだけです。
幽霊の正体は枯れ木だった|暗示におびえないために
正体がわからなければ、恐れれば恐れるほど相手は大きく感じられます。
”暗示の力”というのも、そういうもの。
仕組みを知り、対処法を知り、時間と距離を取り戻す。
それだけで、また自分で考えられるようになります。
その前に、大事な意思決定をよくわからない相手と行わない。
大事な意思決定をするときはまず、体調万全にし、信頼できる人物と相談してからにする。
それだけでも、多くの心理的な誘導から自分を守ることができるでしょう。

参考資料
- NHS Wales「Hypnotherapy」
- PubMed「Adult eyewitness memory and compliance」
- PubMed「Sleep deprivation and false memories」



