ゴスのルーツといえるバンド、バウハウスは1983年に来日公演を行っています。

オリジナル期唯一の来日で、東京と大阪で5月にライブをしているのです。

公演のあらましを表にしました ⇓

日付会場備考
1983年5月28日(土)東京・渋谷公会堂15時開演の昼公演
1983年5月28日(土)東京・渋谷公会堂同日の夜公演
1983年5月30日(月)大阪・毎日ホール現時点で詳細セットリスト未確認

5月28日の土曜日に渋谷公会堂で昼と夜、日に2ステージ行っています。(*setlist.fm)

そして筆者は、この”昼の部”(15時開演)を観に行ったのです……。

暗く曇ったのことでした。

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来日公演の内容

メンバーは最高

この来日公演は、パリ、テルアビブ、香港、日本を回った1983年ワールドツアーの一部でした。

東京公演の直前には5月24日に香港公演、帰国後は6月11日から英国公演を再開しています。(*setlist.fm)

メンバーは、

  • ピーター・マーフィー:ヴォーカル
  • ダニエル・アッシュ:ギター、サックス、ヴォーカル
  • デヴィッド・J:ベース、ヴォーカル、ピアノ
  • ケヴィン・ハスキンス:ドラム、パーカッション

おそらく、バウハウスというバンドの”最適かつ最高”のメンバーでしょう。

バンドはそれまでに2枚のアルバムを発表していますが、

人気、勢い、カリスマ性などがほぼ頂点に達している頃だと思えます。

じつのところ、2枚目のアルバム”Mask”は賛否両論でした。

しかし、1枚目の”n the Flat Field(邦題:暗闇の天使)”のインパクトは強大で、

この来日当時は将来性を大いに期待されていたと感じていました。

筆者はまだ思春期で、学校で爪はじきにされていて、うつ病に罹っていました。

そのうえ、昭和時代の情報量は微々たるものですから、

「人知れずはまっていたダークなバンド」過ぎなかったバウハウスが、

来日すると知ったときには、激しく動揺しつつもチケット確保に走った覚えがあります。

渋谷公会堂にゴスが集う

昼の渋谷公会堂には、かなりの人が集まっていたのに驚きました。

しかも、当時日本では見慣れないゴスの装いをした黒ずくめの女性(少女ふくむ)が多かった。

そして彼女たちは群れを作っていなくて、おそらく一人で来ていたようです。

誰とも会話せず、そもそも打ち解けようという雰囲気すらない、

黒い装いに黒基調のメイクを施した女性たちが、無言で会場前に集っている……

人がいっぱいいるのに、壮絶な孤独感が漂っていて、

当時、孤独感に苛まれていた私は、そこにちょっと親しみを感じたのはたしかです。

Young woman in a pink, decor-filled room applies pink lip gloss while looking into a pink handheld mirror.

その後、開催されたライブは、見事な内容でしたが、

じつはこの頃すでに、バンドは解散に向かっていたのです。

暗闇に響き渡る轟音と低音ヴォーカル

ステージにはたしか、中央にマーシャルのキャビネットが二段か三段積まれていて、

ドラムスがどこに位置していたのか、記憶にありません……

おもむろにギタリストのダニエル・アッシュが舞台袖から現れ、

轟音をかき鳴らしはじめると、どよめきが起こりました。

どこか刺々しく、皮膚を切り裂くような音のリフは、”Burning From the Inside”。

Stack of black guitar amplifiers on a dim, smoky stage with a single spotlight overhead.

執拗にイントロが繰り返されるうちに、すでに総立ちだった客席が、

何かに魅入られたように揺れ始めるのです。

私の周囲に、気だるそうに立っていたゴスの女性たちが

無言のまま、体をゆらゆらと揺らすような、ダンスとも陶酔ともいえないムーヴを開始。

それが会場全体で同時発生したため、”黒い群れ全体が揺れている”という壮観になったのです。

Bauhaus album cover with four band members in a circular frame, Bauhaus logo top right, and a purple '5 Albums' label at the bottom.
5 Albums Box Set

もとより、会場の照明はひたすら暗めです。音も暗いから、

すっかりゴス空間が仕上がって行き、最後の仕上げのタイミングを見計らって、

フロントマンのピーター・マーフィーが、独特の低音ヴォイスで語り掛けるように歌いつつ、

姿を現しました……黒い会場は興奮の坩堝と化したのです。

彼らのサウンドの特徴の、重さ・遅さ。あと深いリバーヴ(反響)。

無人の大聖堂のなかで異形が蠢いているような、不気味さと空虚さは再現されていたと思います。

Demonic creature with pale face and long claws crawls toward the viewer in a dark gothic cathedral lit by candles and a red moonlit window.

当時、どのような楽曲が披露されたのか。

そのデータを繙いてみると、次のとおりです。

  1. Burning From the Inside
  2. The Passion of Lovers
  3. Boys
  4. In Fear of Fear
  5. She’s in Parties
  6. Antonin Artaud
  7. The Three Shadows
  8. Rosegarden Funeral of Sores
  9. A God in an Alcove
  10. Hollow Hills
  11. Kick in the Eye
  12. Ziggy Stardust
  13. Bela Lugosi’s Dead

私の曖昧な記憶では、終盤に”テレグラム・サム”が演奏されたように思っていましたが、あらためて資料を見ると”ジギー・スターダスト”でした。

また、バンド末期の新曲をリリース前に聴いていますね。

Ziggy Stardust DVD cover with a burning photograph over a black background and bold white title typography above the image. But keep it concise to screen readers: Ziggy Stardust DVD cover with a burning photo and title text above.

彼らのライブは実に手慣れたもので、すでに観衆を魅了することに長けていたように思えます。

特にヴォーカルのピーター・マーフィーのエンターテイナーぶりは相当なものでした。

あの手この手で観客を動かすことを楽しんでいるかのよう。

ライブ終盤にはドクロを蛍光塗料で描いた黒タイツで全身を包み、

客席に飛び込んで煽ったりしていました。

あるいは、そのあたりの嗜好が他のメンバーとの仲たがいの原因のひとつになったのか……。

マーフィーには持病があったようですが、それだけではないでしょう。

ライブでは、他のメンバーが無気力だったわけではありません。

ただ、ピーター・マーフィーの熱量みたいなものが、あまりに異質なため、

他メンバーと何かが決定的に違っていたのは間違いありません。

宴のあと

とはいえ、ライブは大成功の部類に入るのではなかったでしょうか。

少なくとも、ものすごく盛り上がり、客席とアーチストがひとつになった感じがあったのです。

私にとって、”一体感”や感動、というライブの醍醐味を初めて知った日でもありました。

……そして、そんな感覚はライブ終了とともに、一息に消え去るのです。

私のまわりで、体を揺らし、時には感嘆の声をあげていたゴス娘たちも、

急に冷めた無表情に戻り、険のある目つきをして、バラバラに帰路につきます。

会場は超満員には程遠かったように記憶しています。

それでも、かなりの人数が訪れていました。

その人たちが、ほとんど無言のまま帰路につく有様も、その後あまり目にしない光景でした。

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バウハウスの作品

バウハウスはその後、7月初旬に解散します。

したがって、まさにバンドが最高のメンバーで、燃え尽きようとしているところに立ち会ったわけです。

思春期に彼らの1stを繰り返し聴いていました。

それが、年齢を重ねるにつれ、いつしか聴かなくなり、ある頃からは、

悪いところばかりが鼻につくようになって、筆者は聴けなくなって久しいですが、

それでも、ライブをふくめて忘れられないバンドだし、好きなバンドには違いないのです。

さて、バウハウスのディスコグラフィーです。

スタジオ・アルバム

年作品来日公演との関係
1980In the Flat Field「A God in an Alcove」などを収録
1981Mask「Kick in the Eye」「The Passion of Lovers」「Hollow Hills」など
1982The Sky’s Gone Out「Third Uncle」「The Three Shadows」「Spirit」など
1983Burning from the Inside来日時点では未発売。新曲が先行披露された
2008Go Away White再結成後、25年ぶりに制作された最終スタジオ盤

デビュー盤は1980年11月3日に4ADから発売。その後はBeggars Banquetに移籍、1983年の最初の解散までにさらに3枚のアルバムを残しています。(*Bauhaus)

ライブ・アルバム

  • Press the Eject and Give Me the Tape(1982)
  • Rest in Peace: The Final Concert(1992年発売、1983年の最終期公演)
  • Live in the Studio 1979(1997)
  • Gotham(1999)
  • This Is for When…(2009)

主要シングル

年シングル
1979Bela Lugosi’s Dead
1980Dark Entries
1980Terror Couple Kill Colonel
1980Telegram Sam
1981Kick in the Eye
1981The Passion of Lovers
1982Spirit
1982Ziggy Stardust
1982Satori in Paris
1983Lagartija Nick
1983She’s in Parties
1983The Sanity Assassin
2022Drink the New Wine

「Bela Lugosi’s Dead」は1979年1月26日の最初のスタジオ・セッションで録音され、同年8月にSmall Wonderから発売されました。当初のプレスは5,000枚でした。後年にリリースされた編集版とは別物と考えた方が良いでしょう。(*en.wikipedia.org)

公式映像作品

年タイトル内容
1984Shadow of Lightプロモーション映像とライヴ映像
1984Archiveテレビ出演・ライヴなどのアーカイブ
1999Gotham1998年再結成ツアーのライヴ映像
後年DVD版Shadow of Light / Archive上記2作品をまとめて収録

映画「ハンガー」(The Hunger、1983年)出演

トニー・スコット監督、デヴィッド・ボウイ、カトリーヌ・ドヌーヴ、スーザン・サランドン出演。

映画冒頭のクラブ場面にバウハウス本人たちが出演し、「Bela Lugosi’s Dead」を演奏します。

ここで鉄格子越しに歌うピーター・マーフィーの姿は、音楽・映画・ファッションとしてのゴスを結びつけた象徴的な映像です。

Poster for The Hunger DVD: black background, Bowie and Sarandon with the white stylized 'The Hunger' logo and Japanese text.

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蒼 薫
元作家(スピ系)・経営者です。 物書きのときは、別名を使用していました(封印中)。 ナチュラルスピリットから刊行されています。 フィットネスやアート関係が好きです。 ヨガ・ピラティス・太極拳・筋トレなどやっています。 音楽・文芸特にフリークです。 やたら多趣味です。時間足りないです。 友達、ギリギリ少なく、犬や猫や鳥と暮らしています。